毎月1日になるとクレジットカードの利用額がリセットされてヤッホーウという気持ちになるのだけど、この10月の1日はそれとは別にいろいろと大変なこと、具体的には東京証券取引所のシステム障害が起きていたみたいだ。
概要はこのへん。*1
その日の夕方に東証の社長や役員、そしてCIOを交えた記者会見があり、どうやらその評判がかなり良かったらしい。僕も全部は見ていないものの、半分くらいを1.5倍速で見た感じだと、「え、この人ちゃんとCIOしてる。責任の範囲を明確にしつつ、謝罪すべきところで謝罪し、かつ事象を的確に説明している。」という感想だった。
このへんの話をあんまり追いかけているわけでもないし、別にこのブログで誰かを叩きたいわけではないので詳しいことは言わないけれど、でも僕の観測している範囲の人たちによれば、直近で起きた似たような他社事例よりもかなり良い対応だったらしい。この記事とかわかりやすいかも。
で、この一連の流れを見て思い出したのが、昔読んだREWORK*2という本の「ダメージコントロール」という章の一節だ。
1989年、エクソンのオイルタンカーが、アラスカのプリンスウィリアム湾で座礁し、1100万ガロンの原油が流出した事故があった。エクソンの対応は鈍く、アラスカに救援を送るのにも時間がかかった。エクソンの社長がアラスカへ赴いたのは事故から2週間後で、遠い現地で行われた記者会見にはマスコミもなかなか行けなかった。これは、PR上の大失敗である。世間に隠し事をし、別に事故は大したことではない、と言い張ったも同じだ。
それに比べ、ピッツバーグ近辺で同時期に起こったアッシュランド・オイル社の原油流出事故は対象的だった。アッシュランド社長のジョン・ホールはすぐ事故現場へ向かい、すべてを除去すると誓ったのだ。さらにみずから報道機関に出向き、これから何をするかを説明し、世間の質問にも答えたのだ。その日のうちに「腐敗した石油会社がまたやらかした」という論調を「善良な石油会社が善処しようとしている」に変えたのだ。
まぁ現実はここに書いてあるような「善良な証券取引所が善処しようとしている」という論調に世の中がなっているかというと、残念ながらそうではないみたいだけど、少なくともある程度IT業界に詳しい人の間ではそうなっているようには見えるし、同時期にまぁそれはそれは色々なことがあったので、そういう意味でもこの文章と結びつけてしまうのであった。
さてじゃあこの教訓というかぼんやりと考えたことをどう活かすかといえば、僕は原油のタンカーや証券取引所のシステムみたいな、世の中の皆様に多大なる影響を与えるような仕事をしているわけではないのでなんとも言えないところだけど、少なくともなにかやらかしてしまっても、先に貼った記事に書いてあるような責任の自覚や余談のない説明、そして早い段階でリスクを判断するといったあたりをまずは真似してみればいいんじゃないかなと、このうちひとつも出来てなさそうな近頃の自分の仕事ぶりを振り返りながら思うのであった。