読んだ。
きっかけ
下記のツイートが流れてきて知った。
若手には「手を動かせ」「量をこなせ」「汗をかけ」「失敗を恐れるな」という泥臭いアドバイスをくれる人が周りにいてほしい。生産性も大切だが、手を動かす量が多いほどアウトプットもアウトカムも向上する。生産性は重要だが「まずは量をやること」が成長への近道だと考えてます。
— nwiizo (@nwiizo) 2025年2月20日
そういう人が周りにいない人は「熟達論:人はいつまでも学び、成長できる」を読むと、この考えが確信に変わります。熟達とは意図的な練習の積み重ねで得られるものです。若手の時期に「量をこなす」経験は熟達への第一歩です。実践を重ねることで暗黙知が蓄積され、失敗や成功が貴重な糧となります。
— nwiizo (@nwiizo) 2025年2月20日
ここ半年くらい、というか今の会社に来てから、仕事のパフォーマンスを十分に出せていないと感じていた。その中でもがく今、このツイートがとても響き、読んでみることにした。
著者について
著者の為末大さんは、元陸上選手でオリンピアン。オリンピックに出場したのは2000年、2004年、2008年とのことで、もともとスポーツ方面に興味のなかった自分は存じ上げなかった。Twitterアカウントはちょくちょくお見かけする気がする。
アスリートは、自分の競技人生でうまくいかず悩んだことに興味を持つらしい。著者は、人間がどのように学んでいるのかに興味を持ち、引退後様々な人と対話を重ね考え抜いた。そのひとつのアウトプットがこの本だ。
感想
本書では、熟達の探求プロセスを「遊(ゆう)」「型(かた)」「観(かん)」「心(しん)」「空(くう)」の5段階に分けている。「基本が大事」と「自分にあったものを選ぶのが大事」や、「量が大事」と「質が大事」といった、矛盾するアドバイスが同時に存在するのは、それぞれが対象とする段階が違うからである。
各段階ごとに章が分けられており、各章には、その段階を見出したきっかけとして、著者が"走る"という行為を極める中で得た経験がエピソードとして書かれていた。ソフトウェアエンジニアとして技術を身に着けたり、あるいはチームで働く人間として議論して仕事を進めていく方法を学ぶ中で得た自分の経験にも通ずるところがありスムーズに読み進められた。
"量が足りない自分に喝を入れる"つもりで読み始めた本書だったが、最初に『遊』がくるのは意外だった。なんとなく、型が最初に来るものだと思っていた。これまで、自己流でやってきたせいで、体系的な知識を身につけられていないことが、自分の課題だと感じていた。まずは基本から学んだほうがいいものと思い込んでいた。まずは、自分が楽しめることや興味を持てることから始めるのも大事かもしれない、と思えた。
その上で、熟達のプロセスを進んでいくために量をこなしていくわけだが、自分が今いるのは5段階のうちのどこなのか?を考えて量のこなしかたを変えていきたいな、と思った。
おわりに
とにかく量をこなさなきゃというモードになるために手に取った本書だが、その解像度が上がった気がする。
本を読み終わったあと、なんとなくこのツイートを思い出した。
練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。
— ダルビッシュ有(Yu Darvish) (@faridyu) 2010年6月11日
どう頭を使うかの方法論のひとつとして、良い本だったなーと思う。