アメリカ発の体験型ストア「b8ta」に行ってきた。ベータって読む。
お恥ずかしながら知ったのはつい2〜3日前なのだけど、いま「体験型ストア」や「RaaS(Retail as a Service)」というワードがアツいらしい。b8taはそのパイオニア的存在で、2015年に創業した。*1
そんなb8taが、2020年8月に日本に上陸、新宿と有楽町にオープンしたということなので行ってきたという話です。とりあえず近いので新宿の方へ。
ガジェット的なものから、機能的なカバンだったり、キッチン用品、そしてお茶菓子的なものまで置いていたりする。(写真撮ってSNSやらブログやらに上げるのはOKらしい)(写真ヘタクソでごめんなさい)
カインズホームやBASEやらとコラボしていたりも。
ここにあるものは、別途「手を触れないでください」と書いてあるもの以外は全て手にとって体験することが出来た。隣に置いてあるタブレットには、その商品の概要やデモビデオ、ギャラリーなどが表示されていたほか、b8ta内で販売しているものに関してはその場で購入するオプションもあるようだった。
体験型ストアというのはお客さん目線の言葉だろう。文字通りお店にあるものを全て体験することが出来る。それだけなら別に地元のヤマダ電機やイオンモール*2でも出来ることも多いのだけど、それらと違うのはビジネスモデルだ。ブランドさんは商品を置くにあたって月額で場所代を払っており、b8taはそこでしっかり収益を得ているので、目の前のお客さんに商品を必死で買ってもらう必要は無い。ただお客さんが立ち止まった商品の楽しみ方やストーリーを教えてくれるだけだ。こっちもそれを理解しているので、「こんなに説明してくれたのに買わないなんて悪いな……」という気持ちにならない。
一方でRaaSはブランドさん目線の言葉。ブランドさんは、b8taのスペースに商品を置く権利を買う。1区画60cm × 40cmのを月額30万円、3ヶ月以上かららしい。それだと単なるショバ代なのだけど、スタッフが顧客に対し製品説明やデモ、ストーリーを語ってくれたりすることに加えて、店内に設置されたカメラやセンサー、タブレットから得られた顧客の行動データを提供してくれるらしい。これは完全な想像だけど、「20代男性。店内をこのルートで歩いて○○の商品に○秒滞在したあとその商品の区画にたどり着く。タブレット上の概要タブを読んだ(インカメラがついてたので目線追ってるのだと思う)後、詳細タブに移動。ギャラリーの写真を数枚見たあとその区画を立ち去る。」「40代女性。あなたの区画は素通り。次の他社の区画で立ち止まる。」みたいなデータがめっちゃ収集されて、それがある程度匿名化されたデータとしてダッシュボード形式で提供されるんだと思う。
とここまで書いて、b8taダッシュボードで何がわかるかが書かれた記事を発見してしまった。軽く読んだ感じ、区画の前を通ったこと(IMPRESSION)や立ち止まったこと(DISCOVERIES)、デモを実施できたこと(DISCOVERIES)、そして成約に結びついたこと(GROSS UNIT SOLD)というデータを中心に、その年齢層や性別だったりごとのパフォーマンスやらが確認出来るということらしい。そういった定量データに加えて、デモの際に言われたお客さんからのフィードバックなんかの定性データも閲覧出来るとのこと。
たしかに、ここ最近の僕の購買行動を考えると合理的なやり方なのかな〜?と思う。お店で「あ、これいいじゃん」って思って店員さんに色々説明してもらって盛り上がっても、その日の後に待ち受ける他の買い物でお金使いまくることを考えて買うのをやめてしまったり、東京引っ越してきて電車生活になってからは特にそうなんだけど、持って帰るのツラそうだしやめようなんて思ってしまう。そして、あとでまた思い出してAmazonとかで買っちゃう。もしそれがヤマダ電機で起きたことならば、完全に負けなのだけど、b8taでは全く問題ない、むしろ勝ち、という感じ。(たぶん)
ここまで僕の感想を書いてたけど、結局このビジネスモデルの本質は、今まで小売店やら大企業やらが握っていた購買データを、ブランドに開放することらしい。コンビニレジの客層分析ボタン*3だったり、なんちゃらポイントカードが至るところで使えたりすることの目的のひとつは小売側がデータを集めることで、その集めたデータは小売側がうまく使ってたり使ってなかったりすると思うのだけど、b8taはそのデータをものを作る人達に開放しますよ、と。
今はまだ日本上陸したばかりで、どうなっていくか様子見の段階っぽいけど、果たしてこの新しい店舗のスタイルが日本に受け入れられるのか、仮に東京でうまくいったとして地方ではどうなのか、3ヶ月〜半年単位でのサブスクらしいが、今出店しているブランドさんが解約した後も区画は常に埋まっているのかそれとも空室(?)だらけになっちゃうのかなどなど、いろいろ気になる。出品しているブランドさんはわりと海外発ガジェットみたいなのばかりだったけど、日本でやっていくならある程度は国産メーカーのものも置いていったほうがいいと思う。そうなったときに、彼らがうまくデータを活用できるようなお手伝いも出来るといいんじゃないかなーとか思ったり。(日本の企業ってデータドリブンうまくやれてないんじゃねという雑なイメージ)
あと、顧客のデータ収集しまくるのWebやアプリの世界ではめっちゃセンシティブになっているのだけど、一方でこれはリアルワールドでガッツリやってるし、入店を以て同意するような感じっぽかったけど、至るところにカメラやセンサがあってある意味監視されているのはディストピア的世界観の一歩手前なわけで、そのへんも今後拡大していくにあたってどうプライバシーとデータドリブンを両立していくのかも気になるところ。
しかし、久々にこういうテック系の話題でめちゃくちゃワクワクしたなー。やっぱり、コロナを言い訳にして家に引き篭もってばかりいちゃダメですね、と反省した。今後もこういうおもしろそうなのあったら飛び込んでみることにしよう。